雨、走り出した後
雨の音が聞こえる…。
新潟県も梅雨に入り、傘マークがつづくと思われましたが気温は高く、夏日もありました。
空梅雨と心配になる一方、ニュースを見ると局地的に非常に激しい雨もあり、シト使徒と降る長雨を懐かしく感じます。
梅雨になると毎年、昔あった出来事を思い出します。
あれはまだ私が学生だった頃。もぅ十年以上前の話です…。
梅雨時期にも関わらず、天気予報もろくすっぽ見ないで傘を持たず家を出た私。
案の定、下校時に土砂降りに見舞われました。途方に暮れつつ半ば自棄で帰路。
自転車をこぎながらずぶ濡れで帰りました。
恥ずかしいやら悔しいやら情けないやら。
猛烈にペダルをこぎ自宅まであと少しで信号が赤になりました。
私は舌打ちし不機嫌度MAX。イライラは頂点に達しました。
青になった横断歩道を渡って年配の婦人が歩いて来ます。
婦人は私の傍らに立つとこう言いました。
「よく降るわね」
「そうですね」
私は上の空で聞き流し、早く信号が変わるのを呪いました。
その刹那
「はい、どうぞ」
「え?」
婦人は自分が差している傘を私に差しかけてくれました。
当然の事ながら傘は一本。私に差しかけることにより婦人は雨にあたります。
白い髪に雨粒が落ちていく。服に雨が染みていく。その細い肩に雨が…。
その時の私の衝撃は過去にないものでした。今でも鮮明に覚えているのが何よりの証。
私は傘を戻すように言いました。しかし婦人はじっと静かに微笑み私に差しかけてくれます。
もう既に下着までぐっしょり濡れているのに傘を差す意味などない。
私は混乱し、ほんの数秒前の負の感情など綺麗さっぱり忘れました。
「ありがとうございます!」
信号が青になり私は御礼を言い走り出しました。婦人は笑っています。
「気をつけてね」
あんなに重かったペダルも心も今は軽い。
ぽかぽかする。
頬を伝うのは雨ではない別のものでした。
長くなりましたが梅雨になると感傷的になってしまうからいけません。
折り畳み傘を机の引き出しに入れて置く私です。
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